トラフグの毒を処理するのに資格は必要なのか、ふぐ調理師の意外な事実

トラフグといえば、庶民の憧れの高級品として知られています。
と同時に、その体には強力な毒を有していて、決して素人が調理してはいけない魚としても有名です。
ふぐを出す飲食店には、必ずふぐの調理専門の資格を持ったスタッフがいます。
資格がある人自身が調理したものか、あるいはその管理の下で調理されたふぐ料理しか提供することができません。
人間の命に直接関わりますから、とても重要な資格です。
でもこのふぐ調理師の資格には、実は一般に知られていない意外な事実があるのです。

資格が必要なのは業務として他人にふぐを提供する場合だけ

まず多くの人が誤解しているのが、無資格の人間がふぐを調理すること自体は、何ら違反行為ではないということです。
業務としてふぐを提供する場合に限り、資格が必要とされています。
しかもこれは法律ではなく、あくまでも各都道府県における条例という扱いです。
そのため、強制力には欠けるというのが実態のようです。

こうした現状が、毎年ふぐの中毒によって人が死傷するニュースの背景となっているのでしょう。
ちょっとネットで調べてみたら、どうやら法律違反にはならないらしい、家族や友達と食べるだけなら大丈夫だろう、
そう考える人が後を絶たないのです。
しかし、いくら違法ではないといっても、動画サイトの見よう見まねでトラフグを捌くのは大変危険な行為です。

都道府県によってレベルも違う、ふぐ調理師の実態

ふぐ調理師の免許についてもっと驚くべきことがあります。
実はその資格取得の難易度には、都道府県によって大きな違いがあるのです。
数年の実務経験がないと受験資格がない県や、しっかりとした実技試験を実施する県もあります
。しかしその一方で基礎的な講座を受講するだけで免許を発行してくれる自治体もあるのが現状です。
そのため一つの県で資格を取得しても他県で通用せず、また資格を取りなおさないといけないという事態も起こり得るのです。
この状況はふぐ調理に携わる人たちを悩ませていて、制度を疑問視する声も上がってきています。
消費者としても、自分が口にするふぐを捌いたのがどれだけの知識や技術を有する人なのか、
というのは気になるところです。以前ふぐの毒がある部位がパック詰めされて、
普通にスーパーの鮮魚コーナーに並んでいたという事件も話題になりました。
お店の商品はプロが管理しているものだから、と安心してばかりはいられないかもしれません。

ふぐの本場のプライド、山口県のふぐ処理師免許

山口県ではふぐを扱うのに必要な資格を、ふぐ処理師といいます。
山口県ではまず受験資格として3年以上のふぐ処理業務の経験が求められます。
実務経験のある人でないと、スタートラインに立つこともできないのです。
その後講習会を受講し、学科と実技の試験を受けます。
山口県の試験は難関とされていて、山口県のふぐ処理師の免許があれば、大阪と東京をのぞく全ての場所でふぐの調理ができるようになります。
逆に山口県は、他府県のふぐ調理に関する資格は一切認めていません。
ここにふぐ処理において高いレベルを保ってきた、歴史ある県のプライドが垣間見えます。

スピード勝負、東京は包丁さばきをテストされる

東京のふぐ調理師の試験の特徴は、その実技試験の難しさです。
制限時間内に目の前のふぐの種類を鑑別していく種類鑑別に始まり、除毒処理と臓器鑑別、実際の調理における包丁さばきまでが試験対象です。
除毒の作業から盛り付けの完成までを20分以内に行わなくてはいけないとのことですから、
かなりの練習を積んでからでないと試験に臨めないことが分かります。
もちろん除毒作業は大変重要な工程ですし、刺身の切り方も美味しくふぐを食べるためには必須な技術といえます。

一番簡単にふぐ調理師になれる都道府県は

現在最もふぐの取り扱いに関する免許の取得が容易といわれるのは、ふぐ消費量全国1位の大阪府です。
大阪での正式名称は、ふぐ取扱登録者。その免許を取るために必要なのは、
座学と実技の講習会に参加することだけです。
一応座学の最後にはテストがありますが、非常に簡単な内容で落ちる人はいないといわれています。
今まで一度もふぐに触ったことがない人でも、調理師免許のない人でも講習を受ければ資格はとれます。
これまでも取得のハードルが低すぎるのではという指摘がありましたが、大阪府ではとくに条例を見直す予定はないようです。

ふぐ調理師免許の今後のあり方

ふぐの調理は、食べる人の生死に関わる重要な仕事です。
しかし、ふぐの免許や資格の扱いは必ずしもそれに相応しいものとはいえません。
あくまで各都道府県の条例で定められた地域限定のものであるということは、
従事する人たちの職業人生にも関わる問題です。ふぐ料理は日本が誇る食文化。
それを維持するためにも国家資格として統一し、その地位を高めていくべきではないでしょうか。
日本中どこに行ってもレベルの高いふぐ料理が食べられる日がくるといいですね。

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